最も初期の発言では、ARIONは嘘をつかない事を誰にも推奨していました。一見大した事ではなさそうな気がしますが、実は嘘をつかないという行動そのものに、大変に重要な意味合いが込められていた事に今気が付くことが出来ます。

■最初に薦めていた実践行動

　ARIONがチャネラーの北川氏を通してネットワーク上に直接書き込みを始めたのは、現在の「＠ニフティ」の前身であるパソコン通信「NIFTY-Serve」の中でした。北川氏はARIONのために別のIDを作り、ARIONが伝えてくる言葉をリアルタイムで書き込むのにそのIDを使いました。つまり、我々には普段見ることのできない天使が、パソコン通信の仮想空間では普通の人間と同程度に実在することが出来たのです。これは画期的な事でした。

　最初は試みだったので不思議関連のフォーラムの一会議室(現在で言う掲示板の１スレッド)としてスタートしましたが、すぐに盛況となり独立したフォーラムとなりました。その前の一会議室時代の最初の頃の、人間と天使のやりとりを本にしたのが

　「アリオン世紀末書込み寺　壱の巻」　1992年　アーリオーン＋北川恵子著　南雲堂

です。残念ながら弐の巻以降は実現しませんでしたし、当時の記録も既に閉鎖されてダウンロード出来ません。
　この時代に初めて天使と対話した人々の貴重な話し合いが掲載されています。最初は天使の声とチャネラーのその翻訳が果たしてどのくらい高精度か？とも話題になりました。チャネラーの人間としてのセンスが天使の言葉に紛れ込んでしまっては不正確になるだろうという疑いです。しかしこの点において北川氏はARIONから相当訓練されたようでしたし、ARIONが書いている時には北川さんは記憶が無いとのことでした。勿論誰にも証拠はわかりません。しかしそのARIONの話す内容からして信頼に足ると判断した人は多かったと思います。

　さてその中でARIONが始めて会う人に、嘘をつかないと言う事を推奨していました。

『まず他人に嘘をつくことを止めること。そして『自分』にも嘘をつかないこと。』
とか
『一番初歩的なアプローチとして「自分にも他人にも嘘をつかない」というのがある』
とかです。

　ARIONは人々に接し始めてから最初に嘘をつかない実践を薦めたのですが、これは何故なのでしょう？
　これは実はその後の人間の進化について、天使達が人間を観察調査した結果、最も最初に手をつけるべきところだったからだと言うのがわかってきます。以下にそのことについて考えをまとめました。

　■嘘をつく構造

　人間の意識構造について天使達は色々に研究しているようです。私たちの科学は物質的な構造を手掛かりに身体の仕組みを考えますが、彼らは精神的構造を調べています。

　それによると、私たちが五感で感じた情報は、当然ながら神経によって大脳へ伝えられるのですが、脳の中でも自意識の処理を行っている大脳新皮質で処理されるのだそうです。
　ところが私たちには単なる情報処理だけでなく喜怒哀楽といった表現があります。手足に何かが刺さったら痛みを感じて反応しますが、これが単なる情報処理だけなら痛がるなんてことはしないはずですね。

　つまり神経で大脳に伝えられる情報は、そこから精神的な自覚意識である「心」に送られて、そこで反応を生み出すわけです。
　生み出された反応はまた大脳へ戻され、痛がったり熱がったりといった身体の動きや表情として出力されるのですね。
　こうした心の存在は物質的にはまだ解明されていませんから、心の反応でさえ大脳で処理されていると普通は考えられています。でも我々の自覚の中では、心の喜怒哀楽というのはごく自然にあって、情報処理のような無機質なものではないことは誰もが知っていますね。

　この心の作用には良心の洗礼というものもあるのだとARIONは説明しています。良心というのは現代社会では立場によって変化する、基準のよくわからない、ひどい場合にはキレイ事と名付けられて悪役にさえ見せられてしまう事もありますが、本来は個人個人が善悪を判断する基準として作用していたものでした。
　良心というものがどこからやってくるのか、その善悪の判断基準はどこからやってくるのか、それは別のところでARIONが説明していますのでここでは省略します。

　ここで重要なのは、現代情報化社会で次々と情報を処理してゆかなければならない社会となってしまった今、私たちは大脳でそれらを処理するだけで、心に照らしていないという事です。

　つまり良心による洗礼を抜きにして、とにかく善悪判断抜きに情報処理を続けているのが現代人の精神的構造になりつつある、それをARIONは憂慮しています。

　そういうふうに良心を使わなくなった、そして使えなくなった人々が、物質的豊かさのみを是として組み立て続ける今の社会は、この地球にそぐわなくなるだろうと言うわけです。本来人間だけが、この心という作用を持っている生命体なのに、その人間が自ら心という宝を捨てて邁進している、だからこそこの社会は、そして地球全体が、崩壊に向けて歩みつつあると言うのです。

　こんな壮大な問題を突きつけられても私たち一人一人は困ってしまうかも知れません。
　しかし卑近なヒントがあります。
　心を使わなくなった人は平気で嘘をつける、とARIONは説明しているのです。

　私たちの身の回り、あるいは私たち自身、嘘をつくことが日常的にあるでしょう。
　嘘とは事実と異なる事です。見方によって変化するものを色々に表現するのは嘘ではないでしょうが、明らかに事実と異なる事を言うのは嘘です。
　例えば飲み屋で一杯、出る時に「またいらしてください」と店員に言われて「はーい」などと一杯気分で言ったりしませんか？　実際に行くのならそれでも良いのですが、そういう時は大抵口先だけで、同じ店にまた必ず来よう、そして実際にまた行ったという事は殆ど無いのではないでしょうか？　こうしたちょっとした事でも嘘は嘘です。
　そして嘘を嘘でなくするために「その時はそのつもりだったんだ」などと言い訳すると、自分でも段々嘘か本当かの区別が付かなくなっていきます。

　仕事の上で嘘をつかなければならない事態もあるでしょう。それは命令だから仕方がないとか、仕事上のルール(機密保持などの)なんだから仕方がないとか、言い訳が比較的簡単です。でも嘘を言っていると言う自覚が無くなってしまっては困ります。

　もう嘘をつくことに慣れてしまった人間は、調子の良い嘘を並べているうちに、その嘘が本当に思えてきてしまうそうです。心にもない事を言いながら段々その気になってしまうのですね。そうなってしまうと、もう嘘か本当か自分でも区別が出来なくなってしまっています。

　ARIONが言うところの心が死んだ人というのはそういう人々の事を言うのではないかと思うのです。つまり良心が作用しない、嘘と真実の見分けが付かない人。良心の呵責がないから何でも出来ます。
　近年、信じられないむごい事件を起こす犯人は得てしてそうした心を失ったような人に見えませんか？

■心と魂

　僕はこの節でARIONが「心の洗礼」と表現したものが「良心」に関わっている事から、実は厳密には「心」ではなく「魂」ではないかと読んでいます。

　科学者は外界からの刺激によって脳細胞の反応が起きて行動を示すという医学的・物質的な人間の意識構造を追いかけていますが、ARIONの説明によれば心はそうした大脳の働きだけでは説明ができないものです。単なる反応判断系ではなく、喜怒哀楽といった表情が表れるのです。そういう意識を心と呼んでいます。

　私たち自身がその「心」と言うものと「論理的判断」と言うものとは別だなと認識できるでしょう。ですが心が脳細胞のどの器官で行われているのか全くわかっていません。物質的に追求してもわからないのです。しかし天使達は人間を意識の面から解析しているので、心というものも解析対象になっているのでしょう。
　実は心というのはとても人間らしい反応を示す場所であり、所謂「人間味」の出所でもあるのは誰もがわかることでしょう。これなくしては人間はただのロボットと余り変わらない。最近では人間そっくりのロボットが実現していますし、映画でもそういう存在は語られてきていますから、想像しやすいと思います。こうした人間そっくりのロボットは判断しかできず心がないので、とても無機質的な動作をしている（映画の場合は演じている）ものです。そこには善悪の判断も勿論ありません。

　こうしてみると心は喜怒哀楽だけでなく善悪の判断もしているように思えます。良心もそこに存在しているように思えます。引用している本文でもそのように読めます。しかしARIONはここ以外でもっと突っ込んだ解析を見せており、それによると「心」は「肉体」と「魂」の間をつなぐ意識の場であるように表現されているのです。

　魂？　言葉は身近ですが、誰もその魂というものを見た人はいませんし、逆に物体に魂を込めるなどという言い方をすることさえ在ります。魂とは何でしょう？

　僕はここで映画スターウォーズに出てきた「フォース」を思い出しました。Forceという英語は「力」という訳ですが、劇中でフォースは宇宙全体に広がっている霊的な「場」であって、生命に限らず万物をとりまき結びつけている宇宙の構造そのものだと解釈されています。そしてそのフォースを敏感に感じ取れる人物は、フォースから何かを感じ取ったり、あるいは逆にフォースを意のままに使いこなします。宇宙の構造そのものですから、それを使いこなせば物体を浮かせたり、自分自身を浮かせたり、遠くの事件を感じ取ったりできるわけですね。そして死んで肉体を離れるとその肉体はフォースそのものとなり霊体となるのです。
　ARIONの言葉でこれにちかいと思えるのは「宇宙生命潮流」です。別名コズミック・バイオ・システム。天使達はこの潮流の流れる方向性こそ宇宙の生き方に見合った方向性であり、彼らの行動指針でもあるという風に解釈しているようです。
　つまり、善悪の判断はこの潮流に見合っているかどうか。ARIONはその判断の根拠は「愛」だけだと言います。そして「愛」の解釈は様々のようでいて、彼らにとっては「対象となるものを育む力」と説明しています。つまり可能性を育てる方向性を求めるかどうかで判断ができるのです。

　私たちが日頃の喜怒哀楽で思うことは、自分にとって都合がよいか悪いかと言うことが殆どではないでしょうか。
　しかし宇宙的に見れば全く違った観点になります。そんな観点を私たちは普通意識してはいなかった。それもそのはずです。心というのは自分の中にあって、決して宇宙全体に広がっているような感覚ではないのですから。
　だからこそ「心」ではなく「魂」こそがここで言う良心を示してくれるものではないかと思うのです。

■嘘をつかないことの効用

　魂は実に弱々しく小さな声で語りかけてきます。それを聴くことの出来るのは私たちの心だけなのですが、心がざわついていると全然聞き取れません。
　また嘘をつくことに馴れてしまっている人は、もはや自分が発想する何もかもが嘘か真実か見分けが付かなくなっていますから、僅かな魂の声があっても、それが真実か嘘か見分けられなくなってしまっています。
　更に心は魂の声が小さいのを良い事に、欲に満ちた自分に都合の良い言葉に敢えて聞き違えてしまうこともあります。自分で自分に都合の良いように魂の声を聞いた気分になってしまうのです。
　そんなわけで、魂という言葉は卑近でありながら、誰もその存在を確信して実感できていないと言うのが現代でしょう。

　魂からの声を聞き分けるためには、まず自分の心が感じた事を信頼出来なければなりません。
　そのために最初にするべきは、「嘘をつかないこと」なのです。

　嘘をついた瞬間、それは嘘だと魂のレベルではわかっています。そしてその信号を受けた心も嘘だと認知します。ところがその小さな呵責を無視して嘘をつき続けると、心はだんだん自分自身を信頼しなくなります。心の奥深くで魂は嘘だと言っているのに、自分の肉体は嘘を本当として話す。これが嘘の構造です。これを続けていれば、心はやがて魂に従わない自分自身を信用しなくなるのです。

　よく自信が持てないという人がいますが、そういう人は嘘を言ったり行動したりすることが多すぎるのでしょう。多すぎてもはや自分では嘘も本当も区別がつかなくなってしまっているかも知れません。嘘をつき続けるとどんどん自信を失います。自信を失うと不安なので、他人に保証されようとして人気や人受けを気にするようになります。
　自信を持てない人には、まず「嘘をつかないように生活してみてください」と言いたい。

　ARIONが嘘をつかないことを推奨していたのは、正にこのためだと考えています。
　宇宙生命潮流の流れを伝える魂からの信号を受け取るためには、自分の心を信頼できなければならない。自分と心との間に信頼関係がなければ、この微細な信号を信頼できないからです。
　日常のちょっとした、害のない程度の口裏合わせみたいな嘘でも、とことん可能な限りつかないことです。

　ただし他人のためにつく嘘や、職場のルールで強要される嘘は、これは仕方がありません。そういう嘘は「方便」です。
　方便と嘘の違いは、自分のためにつくかどうかです。他人のため、会社のためにつくのは方便です。
　そしてそういう方便なら心は自分自身を信頼しなくなるようなことはありません。

　これは自分との戦いなのです。
　嘘をつかないのは実に簡単なようで実に難しい。

　女優・タレントの上戸彩さんが、雑誌のインタビュー記事で答えていました。
　　自分の良いところは？「嘘をつかないところ」
　　自分の欠点は？　　　「嘘をつけないところ」
　だそうです。上戸さんとCMを共演するとその後人気が上がると言う伝説があるのも面白いことです。

　ARIONは最初の頃、実に手軽な感じで嘘をつかないことを推奨していました。最初からARIONは我々人間に魂からの声を聞こえるようになって欲しかったのでしょう。そのための実践的な最初の段階を、最も初期から示してくれていたのです。

　あなたは自分を信頼できますか？
　心の奥底から僅かに聞こえてくる、良心の信号、魂からの言葉が聞こえますか？

（2010/01/19）

■環境汚染の現状へ

　このページでは環境汚染の詳細についてを語るのが主題ではないので、それは別の機会に譲ります。

　むしろ環境問題についてARIONは環境問題についても嘘をつかないという心の姿勢を軸に対策を語っています。

　本が作られた1990年前後では、都心部の各所で地盤沈下が起きている話題がありました。こうした変化は地球の自浄作用のほんの序の口であるとの話なのですが、実際に地盤沈下に悩まされている住人にとっては困った問題です。

　普通ならば地盤沈下を止める方策を考えるところですが、ARIONはむしろ人間も地球の一部である以上、地球の自浄作用と同調することが解決策だと述べました。その上で実際我々がどういう事をすればよいか、それが嘘をつかないことだと言うのです。

　見栄を張らない、嘘をつかない、と言うことがここで強く推奨されています。人間だけが嘘をつく。地球も自然も嘘はついていない。ならば人間だって嘘をつかずに生きて行けるだろうと諭すのです。

　恐らく大多数の人は、現実社会では嘘をつかないで商売は出来ないとか、嘘をつかないからと言って機密をしゃべるわけにもいかないとか、様々な理由によって「嘘をつかない」と言う事を否定しにかかるでしょう。
　ですがARIONは「考える」のではなく「感じてほしい」と書いていました。言葉通りに嘘をつかないと言う意味ではないということでしょう。

　嘘をつかないことを推奨しているのはどういう意味か？　それは、嘘をつくことが有効だと思ってしまって自分の内面より外面ばかりを飾るようになることへの警鐘でしょう。つまり”外面的に”嘘をつかないと言う言葉ばかりに目がいってしまうと、ARIONが感じてほしかったことが伝わらないのだと思います。感じてほしかった本当のこととは、嘘をつかないことによって自分の心に正直であるという精神性を身につけてほしいということではないでしょうか。

　地盤沈下の本当の原因を業者や関係官庁が明かさないとすれば、これは嘘に値するわけです。彼らは建物を建てたり、認可したりした以上、彼らの判断行動を保証する責務を全うしているという見栄を張りたい、あるいは張らなければならない、そういう”立場”にあると考えているのだと思います。
　しかしもしここで、見栄を張らず嘘をつかないことを実践するならば、本当の原因を明らかにして対策を打つ方向へ向かうはずです。
　対策を打つ事、すなわち自らの落ち度を認めること、すなわち自らの価値を低めることになる、という連鎖によってそれが実践出来ないのではないでしょうか。見栄をはらなければこの連鎖の根本は崩れることになるし、立場という考え方も変わるはずです。

　正にARIONが感じてほしかったのは、こうした心の問題ではないかと思うのです。
　心の問題がそのまま行動に反映されてくるわけです。

　地盤沈下に限った話ではありません。他にも様々な場面で「見栄を張らない」ことによる根幹の変化、「嘘をつかない」ことによる明らかな対策開始など、地球の浄化作用に対応するための行動が生まれてくるはずです。しかしそれは具体的には場面場面で異なる行動になるでしょう。ただ唯一共通しているのは「見栄を張らない、嘘をつかない」という言葉だけなのです。
　だからARIONはその言葉を示しているのではないでしょうか。
　その言葉の意味・真髄を感じ取って、様々な日常の場面に応用することによって、我々は初めて地球と同調する生活をはじめられる、そして地球の浄化作用の変化の中でも生き抜いて行けるようになるはずなのです。

　嘘をつかないことなど不可能だと決めてかかっている人は、実践していない人でしょう。
　僕自身は嘘をつかないことを目指して徐々にではあるけれど努力してきています。
　そしてその成果も受け取れています。

　(追補：2010/01/24)

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